2019年12月22日日曜日

【報告】新潮講座・小金井篇

2019年最後の新潮講座は、12月15日(日)小金井篇でした。

中央線武蔵小金井駅の南側、国分寺崖線と野川を巡りました。

明治39年測図(今昔マップより)。崖線上は桑と樹林、崖線下は野川と水田、小金井分水の流れがあります。

昭和20年部修(今昔マップより)。真ん中にある松平女学校は、1930(昭和5)年に農村の女子を対象として開校した家庭科を中心とする実科教育の学校です。ただ、経済不況もあり1933(昭和8)年に廃校となりました。跡地は大衆食堂の草分けといわれるモーリ食堂の農園などになりました。

昭和51年ニ改(今昔マップより)。野川の改修工事が徐々に進んでいます。

この日は小金井市の坂と湧水巡りです。国分寺崖線沿いには坂名がつく個性的な坂道がたくさんあります。坂名の由来は『小金井市の歴史散歩』から。
質屋坂:江戸時代に下小金井村の名主、星野家が営業していた質屋が由来です。

なそい坂:なそいとは斜めの意味で、なそり坂とも呼ばれました。
写真左手の幡随院は1603(慶長8)年に神田駿河台で創建、1657(明暦3)年の振袖火事で浅草に移転、1940(昭和15)年に現在地に移転してきました。修学院離宮を模したといわれる広い庭園に阿弥陀堂、開山堂、茶室があるそうですが、非公開です。
武蔵小金井駅前にできたタワマンで、スリバチ第一の法則(=坂上の集合住宅・坂下の住宅集合)が、都心から多摩地域にやってきた感じになりました。

念仏坂:坂の途中に墓地があり、一人で通るのが心細く念仏を唱えて通ったことに由来します。

坂の途中にある茅葺き屋根の建物。

念仏坂に続く坂道から望める府中浅間山と、遠く多摩丘陵の稲城方面。

平代坂:坂の東に住み、水車屋を営んでいた梶平太夫の名前が変化したといわれます。
この坂には玉川上水の分水のひとつ、小金井分水が流れていました。
小金井分水は、1732(享保17)年に貫井橋の上流から開削され、小金井村一帯の田用水や生活用水、飲み水に利用されました。

弁車の坂:江戸時代に弁次郎が営んでいた水車があり、水車に通う道のことを呼んでいました。

滄浪泉園下。湧水が池に溜められて、さらに野川に注がれていきます。

花と緑の小径として整備されていて、野川まで気持ちよく歩けます。

野川に合流。

野川を越えて下弁天に。
かつて弁天池があり、池の中央の島に弁財天(厳島神社)が祀られていました。
厳島神社は貫井神社に遷座されたといわれます。
一帯は大城堀という水田地帯で、池の南側は池の上という貫井村の発祥の地とされます。

かつて野川が流れていた所でしょうか。橋の痕跡があります。

小学校の校庭下を流れる野川。

河川改修前の野川の旧流路が残っています。

金井原古戦場。
南北朝時代の1352(正平7)年に、南朝方の新田義貞の子、義宗・善興等が上野(現在の群馬県)で挙兵し、武蔵国と相模国の各地で北朝方の足利尊氏と戦ったのが武蔵野合戦。大軍勢が人見原(府中市若松町)から金井原にかけて戦いを繰り広げました。

小金井分水の痕跡。

小金井神社。
古くから小金井村の鎮守で、1870(明治3)年に小金井神社と改称されました。
狛犬は小金井小次郎が奉納したもので、台座に子分など198名の名前が刻まれています。
境内には力石や、石橋供養塔や石臼塚などの石造物があります。

はけの小路。はけの森美術館の湧水が野川に流れる途中にあります。

ムジナ坂:坂上に住む農民が坂下の水田等に通った道で、暗くなって歩くとムジナ(狢)に化かされるという噂が由来です。



観音坂:坂の途中に子育観音があります。

おお坂:薬師道につながる主要な坂道で、中念坂とも呼ばれました。

はけの森美術館。
日本洋画壇の重鎮として活躍した中村研一の旧居と茶室があります。「はけ」と呼ばれる国分寺崖線に釜状に切れ込んだ地形がよくわかります。

白伝坊の坂:坂の途中にある渡辺家の墓地に白伝という僧が住んでいました。
写真左に板碑が2基あります。右が月待板碑、左が延慶の板碑です。

車屋坂:バス停の写真ですが、明治時代に関家が経営する水車(車屋)がありました。

オタイタヤは大木で市の天然記念物です。この地の湧水が小金井の地名の由来となったともいわれます。

左が金蔵院の坂。右は雰囲気のある階段。

江戸後期から明治時代の侠客として知られる小金井小次郎(関小次郎)の墓。
関東一円に大勢の子分を抱えていたと伝えられています。

小金井スカイコーポラス。
「はけ」の地形の名残りが感じられます。かつてここの湧水はこの一帯で最大の量だったそうです。ちなみにこのマンションは、黒井千次の小説『たまらん坂武蔵野短篇集』で舞台のひとつとして出てきます。

妙貫坂:坂道東側の墓地に庵があり、妙貫尼という尼僧が住んでいました。

来年1~3月期の新潮講座は、国立駅周辺を歩きます。

0 件のコメント:

コメントを投稿